ライターのトシヒーローです。
障害者と言えば、身体障害者や精神障害者をイメージされる事が多いと思います。しかし、僕ら人工透析(腎不全)患者も障害者になるんですね。
週3回、1回4~5時間とも言われる人工透析により生活における制約が多いですからね。
こういうのを内部障害と言います。
内部障害は他にも、心臓にペースメーカーが入っているような心臓障害、酸素ボンベを付けなければ呼吸に影響がある呼吸器障害、小腸を切除し口からの食事以外にも栄養摂取が必要となってしまう小腸障害など、数々存在します。
内部障害ってピンッときませんよね。しかし、なってみると大変です。なにせね、一見して障害者とは理解できませんから。
人工透析を受けた後、帰宅しようと電車に乗ったら、急激に血圧が下がってしまい座っている事すら出来なくなる。(低血圧発作)
空いてる時ならいざ知らず、僕は席を譲ってもらった事さえあります。
僕が、就職を支援してもらおうと、障害者支援者に支援をお願いした事がありました。
ところが、まず、電話をかけた先の障害者支援では身体障害者と精神障害者の職業支援を主にやっているという所でした。
「えっ? そちらでは内部障害は扱っていないんですか?」という話になってしまいました。もちろん、横のつながりで内部障害の支援もやっている所を紹介していただきましたけどね。
何度かお話しさせていただき、最終的にはパソコンをやろうという事になりまして、山の中に光回線を引いてもらえるように手配して頂きました。
この時初めて、障害者というものは、障害内容によっても分けられるという事を知りました。
確かに受け入れ側の企業にとっても、障害者がどのような障害なのかは重要要素と言えます。職種も色々ありますからね。
仕事内容と障害による、出来る出来ないは必ずあるでしょう。
「私は、軽度障害者が重度障害者の面倒を見るようなシステムを構築すれば良いと思ってるんですよね。」とは、ある政治家さんがおっしゃった言葉です。
えっ? 本気なんでしょうか?
全く不可能な話ではありませんが、軽度障害といっても皆さん生活面で制約がある方ばかりですね。
健常者でもあれだけ大変な仕事を、障害者がやるというのはかなり厳しいです。
例えば僕も、体調の良い日と悪い日がありますし(健常者でも体調の差はあると思いますがそのレベルではない)、「内シャント」と言って「透析用の血管」を左腕に持っておりまして、これは簡単な事でも壊れやすく、シャント側の腕はケガが出来ません。
重い物も持てず、何かあってシャントの不具合が起きると、人工透析が出来なくなる。
人工透析が出来なくなると死にかねないという問題が起きます。
もちろん、支援の中でも障害者でも可能な職種はあると思います。
僕のような内部障害者でも、パソコンを打ったり、簡単な料理を作ったりは可能です。しかし100%の重度障害者のケアをしようと思ったら、中には健常者の力を借りなければ出来ない事も多々ありそうです。
一概に全て反対という訳ではありません。
面白い考えだと思いますし、一部、障害者施設で働く障害者もいます。
それはそれで良いと思うのですが、その政治家さんの口ぶりでは、全ての障害者は障害者同士でカバーし合え! といった意見に聞こえましたから。(そのような意味で言ったかどうかは僕の主観に過ぎませんが。)
「乱暴な意見だなぁ。」と僕は思った訳です。
障害者が働くという事は、そこに健常者の理解がなくては難しいかと思います。
僕たち透析者も「透析に行かなければならない」という絶対の制約があります。
人工透析をよく知らない方であれば、
「1回くらい飛ばしても大丈夫なんじゃないの?」
といった疑問が起きると思います。しかし、透析に行かないという行為は病院に多大な迷惑をかけてしまう事になり、後々までの信用問題にまで発展しかねません。
人工透析では、「透析をさぼる」という行為はご法度とも言えます。
通常の週3回透析ですと、月水金、もしくは火木土に透析を受ける事になります。
月水金で透析を受けている方は土日、火木土で透析を受けてる方は日月が2日続けて透析無し日となります。が、この中2日の2日目というのは、透析者に急変が起こりやすいとも言われております。
この事から人工透析で一端、週3回透析となった者は中3日とかは余程の事が無い限り、病院から厳しく注意される事になります。また、透析の時間帯も、細かく病院内で調整してくれてますので、遅れていくというケースではかなり迷惑が掛かる場合もあります。
こういった観点から、人工透析では仕事のほうを融通し、透析の融通は利きにくいという問題が生じます。
僕のようなフリーランスで仕事している者ならともかく、企業で就職されているような人工透析患者は「透析を受ける」という事にいつもいつもは融通が利きにくい(お願いしにくい)という事が起きるのです。
他の障害者でも同じような事が言えます。
「この仕事出来るかな?出来ないかな?」といったような、判断の難しい業務もあろうかと思います。
長く障害者を扱った経験がある上司がいれば問題も少ないでしょう。しかし、これから障害者を入れようと考えている企業では難しい部分もあるでしょうね。よく話し合って、本人の意向と会社の意向が合致してれば良いんでしょうけどね。
何分にも、障害者が働くという事は、健常者の理解が無いととても難しいです。
障害者が働くという支援をして下さったり、障害者労働に取り組んで頂ける方は昨今増えてきておりますが、企業側、障害者側双方が安心して働ける(働いてもらえる)環境にはなっていない場合があります。
現在では「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法整備は順調ですが、まだまだ実質的な差別解消や雇用促進には繋がっていないと僕は感じております。
今後の展開に期待しつつ、障害者がうまく世の中に溶け込んでいけるような日本であって欲しいと心より思っています。
(執筆 トシヒーロー)