最近「大人の発達障害」というものを目にする機会が増えました。発達障害の特徴を見ると「片付けられない」「人との距離がわからない」「興味のある話しかしていない」「忘れ物が多い」など,一般にもこんな人いるし,なんなら自分がそうだという人もいらっしゃるでしょう。
そのため,忘れ物をすると「あー,発達障害かも」なんて言ったり,部屋が散らかってくると「ADHDかも」と言ったりということ聞いたりしますが,これらは実際に発達障害で困っている人にとっては笑えない冗談です。
発達障害は後天的に発症するということは考えにくいものです。発達障害という名称からもわかるように「発達」が関係していますので,先天的なものでありその要因は,脳や神経系の機能に要因があるということ以外まだはっきりわかっていません。
また研究者も医療分野から障害分野,発達分野,心理分野など多岐ににわたっており,それぞれの分野の中でも発達障害が研究対象ではない場合,医者であっても発達障害は全く分からない人や臨床心理士でも子どものことは専門外という方もいらっしゃいます。
では,どういうところに相談すればよいのでしょうか。
公的機関であれば,各都道府県や政令指定都市には必ず児童相談所がありますので,まずは児童相談所に問い合わせるのが良いでしょう。大都市や政令市には療育センターや発達支援センターなどもありますし民間団体でも発達相談や療育相談を受け付けているところは増えてきています。また,かかりつけの小児科でも対応していただける場合や専門医を紹介していただけることもあります。
このような専門機関に相談すると,発達障害は「問題ない」と言われることがあります。しかしこれは発達の状態を評価しているにすぎません。発達障害の一番の困りごとは「人とのコミュニケーション」なのです。場の空気が読めなかったり,頼まれごとや約束を忘れてしまったり,なかなか人を覚えられなかったりということです。日常的に人と関わる場面で起こる困りごとなのです。これは「集団参加のスキル」と置き換えることができるでしょう。
往々にして専門機関では,個人の能力が高ければ集団参加のスキルはおのずと獲得できると考えていたりしますが,環境調整をはじめとしたサポートが必要です。
社会性の獲得は経験の積み重ねも大切な要素です。幼稚園や保育所の先生,小学校の担任の先生などから園や学校での様子をお聞きし状態を理解しておくことが大切です。
友達とうまく付き合えないと,自分を肯定することができにくくなります。
集団の中でどのようにすれば良いのかを先生と一緒に学んでいくことで,ソーシャル(社会性)スキル(技術)の獲得につながっていきます。
自分の子が発達障害だと認めることはなかなか難しいものです。しかし,友達とうまく遊べないことは自己否定につながるとも考えられます。
発達障害のお子さんが不登校になるリスクは典型発達のお子さんの2倍以上という研究もあり,乳幼児期から友達との関わり方を経験し獲得していくことはとても大切なことですので「もしかして」と思ったら,まずは専門機関や園・学校の先生に相談してみましょう。
(執筆 平泉(たいらいずみ))