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何故、私は薬物による自死を思いとどまったか

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薬物

うつ者だけど呑気者のライター、衛澤です。繊細な人だけがうつ病に罹るんじゃないんだよ☆ と、かわいくないのにかわいこぶってみました。

他人さまとお会いすると割りとテンション高めでネタを配置しつつ喋ってしまうので(関西人の習性)、「あなた、ほんとうはうつじゃないでしょ」とか「うつじゃなくて躁では」などとたびたび言われるのですが、筆者は熟練のうつ者です。うつけ者ではありません。
……すみません、見栄を張りました。

※うつけ【空け/虚け】

  1. 中のうつろなこと。から。からっぽ。
  2. 愚かなこと。ぼんやりしていること。また、そのような者。まぬけ。(引用「goo辞書」)

相違ございません。うつけ者でございます。筆者、からっぽでぼんやりのおじさんでございます。

それはそれとして、先日書きました「うつ病患者は死ぬ気になるか」という表題の記事の中で、筆者は過去に薬物による自死を企図したものの、実行には至らなかったということをちらりと申しました。何故そのときに思いとどまったのか、というお話を、今回はさせて頂こうと思います。

薬物を使った自死、その方法とは

みなさんは、薬物を使った自死を企図したことはおありでしょうか。おありの方は既にご存じのことと思いますが、巷に出まわっている薬をただ沢山飲むだけでは、確実に死ぬことはできません。薬物で死ぬということは、急性薬物中毒に罹るということです。しかし中毒になって死に至る前に、つまり致死量を摂取してしまう前に、大抵は嘔吐してそれまで服んだ薬物は体外に排出されてしまいます。

酒に酔っ払うことを考えて頂ければ判りやすいでしょうか。急性アルコール中毒で死亡する人は確かにいますが、大概はその前に「これ以上は身体が受け付けない」と嘔吐してしまいます。薬物でも同じことが起きます。これ以上吸収したらまずい、ということを身体が察知して吐き出してしまうのです。

では薬物では死ねないのか、というとそうでもなくて、市販薬でも自死は可能です。それを確実にするためには薬の成分をよく知って、どの成分が有効に死に繋がるのか、各市販薬のうちのどれにその成分がより多量に含まれていて、どれだけの量をどのように服めば確実に死に至るのかということを、知悉する必要があります。

勉強が嫌いな人には薬物を使用しての自死はできません。

筆者が薬物での自死を志した(?!)頃に市販されていた或る風邪薬は、先行記事で紹介しました「完全自殺マニュアル」(鶴見済/太田出版)によりますと、入手しやすく服みやすく(ほんのり甘い味)、また死に繋がる或る成分が多めに含まれていて自死に適しているとされていました。では早速それを服んで自死しましょうということになる訳ですが、先に述べましたように、ただ大量服薬しても死ぬことはできません。

では、どうするか。

先ずは薬局・薬店を数件廻って「死ぬ成分」が致死量に達するだけの風邪薬を購入せねばなりません。薬のそれぞれの成分なんて微量ずつしか含まれていませんから、薬は大量に必要です。件の風邪薬だと15箱は入手せねばなりません。市販薬というものは割りと高価なものでありますので、お金が乏しい人はこの時点で薬物による自死を諦めねばなりません。

また、同じ薬を一度に沢山購入すると、大変怪しいです。薬物を用いての自死か殺人を企てていると察知されて警察に通報される可能性がありますし、販売を拒否されてしまうことも考えられます。それを回避するため、店を数軒まわって少しずつ小分けに購入する必要があるのです。

さて、街じゅうを駆けまわって薬局・薬店巡りをし、必要量を買い揃えることができたら、あとは購入した薬を「残らず」「すべて」摂取するだけです。顆粒状の件の風邪薬15箱の中身をすべて器に開けると椀に一杯程度の量になると言います。先述しましたように、これを一度に服んだら嘔吐してしまいます。しかし、致死量をできるだけ短時間に摂取しないと人は死にません。

致死成分をスムーズに吸収するためには健康な胃腸が必要です。数日前から食事の内容に気をつけ、適度に運動などもして、胃腸の調子を整えておかなければなりません。さらに必要な成分が吸収されやすいように、前日は絶食して胃を空にしておきます。

当日はさわやかに目覚めたのち、適切な運動をして身体を活発に活動させておきましょう。そして薬と、胃にやさしいヨーグルトなどを用意します。薬をそのまま沢山胃に入れると嘔吐に繋がりますから、用意したヨーグルトなどに混ぜて吐き戻さないように少しずつ食べます。


椀一杯の顆粒をすべて摂るためにヨーグルトをどれだけ食べなければならないか判りませんが、とにかく全部食べなければ自死はなし得ません。同じ味ばかりで飽きてくるかもしれませんが、とにかく食うのです。そうして椀に一杯の風邪薬をすべて摂り、かつ致死量の成分がすべて体内に吸収されてはじめて死の可能性が顕れます。死ねる「かもしれません」。

つまり、金持ちで健康で胃が丈夫な勉強好きの人でなければ薬物で死ぬことは不可能、ということです。その条件を揃えてなお、失敗の可能性は消えないのです。なんたる難関。しかし、ほかの自死の方法に比べて、薬物による方法はかなり簡単なのです。

「完全自殺マニュアル」を読んでこのことが明らかになったとき、筆者は思いました。金持ちで健康だったら死なねえよ! 貧しくて病んでるから死にたくなったんだよ!

死ぬって、難しい

と、まあ、こんな次第で、死を考えることが何だか馬鹿馬鹿しくなってしまったのと、死に方を詳らかに調べることで一回死んだ気になってしまったこと、そして、詳しい自死の方法が判ったことだしいよいよ窮極にどうしようもなくなってしまったら、そのときこそ死んじゃえばいいやと思えたことで、薬物による自死を思いとどまったのでした。「いま死ななくてもいいや」って。

そして、もうひとつ。

「完全自殺マニュアル」という本には10種類以上の自死の方法が記されていて、その何れもに「どのようにすれば確実に死ぬことができるか」という解説がつけられています。たとえば、こんな感じです。

首吊りや頸動脈を切っての自死は多少解剖学の智識がないと難しい。手首を切る場合は多少切ったくらいでは死に得ないので切り落とすつもりで深く深く切らないといけない。投身による自死は障碍物となるものがない適した場所で行わないと巧くいかないので場所を探さねばならないが、条件が揃った場所はなかなか見つからない。など、など。

これだけの手間をかけないと、努力しないと、人は死なない。手間をかけても努力をしても、確実に死ねるとは限らない。

死ぬって大変だ。人は結構頑丈で、簡単には死なない。上手に死ぬのは、難しい。

それが判ったので、もう少し生きられるのかもしれない、と思ったのでした。死ぬには生きるのと同じほど、いや、それ以上の努力や苦労や智識や技術が必要なのだ、と。

だったら自死を企てるだけ面倒くさいや、と思った駄目人間――うつけ者が、いまなお生きてこうして文章を書いているのでございます。それ故筆者は死を望む人に「死ぬな」とは申しません。死にたい人は死んでみるのも一興かと思います。しかし、「死ぬって大変だよ?」というお話は、させて頂いております。生きることに挫折するようなあなたが、死ぬことなんてできるの?と。

死なずに、ものぐさは生きるしかない

真面目で勤勉で努力を惜しまず難解なものごとを理解する能力と行動力がある人でなければ、自死は難しいのです。ものぐさで自堕落であんまりものを考えていない筆者のような人は、死ぬことなど考えずに、何も考えずにただ生きている方がずっと楽です。

生きていれば厭なことも起こりましょう。苦しいこともありましょう。しかし、それはどんなことであれ、永遠ではないのです。台風みたいなもので、頭を抱えて布団に潜り込んでいれば、いつか過ぎてしまいます。

これはうつ病の症状ととてもよく似ています。うつの具合の悪さというのは、いつ現れるのか、患っている本人にも判りません。たったいま元気でも明日は動けないかもしれません。明日どころか10分後には急に身体がしんどくなって起きていられなくなっているかもしれません。

しかしそれでも、やはり永遠にしんどいままではないのです。数時間、或るいは数日、数十日、横になっていれば何れしんどくなくなって動けるようになります。うつの薬は時間薬だとか日にち薬だとか言われるのは、そういうことです。

返して言えば、何もしなくても、黙っていても、苦しいことやしんどさは勝手に過ぎ去っていくということです。ただそこに「いる」だけで成り立つ「生」と、智識も技術も能力も努力も労力も必要な「死」と。ふたつ並んでいたらものぐさは「生」を択ばざるを得ません。無能であるが故に、筆者はいまここに生きて存在しております。

死なずに、なんとかなってます

かような次第で生きて思うのは、人生どうにでもなるものですな、ということです。やることなすことのうちに成功例がひとつとしてなくても、花も嵐も借金も踏み倒すような惨憺たる人生を歩んでいても、何とかなっております。

何とかなるんです。

(執筆 衛澤創(えざわそう))

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衛澤創(えざわそう) by
精神障碍者で虐待サバイバーで性同一性障碍でゲイというクワドラブルマイノリティ。
うつ病・パニック障碍・睡眠障碍・摂食障碍・社会不安障害を併発して精神障碍者3級。
ものごころついた頃から27歳で実家を出るまでほぼ日常的に実父の暴力に晒され、実家を出てからは15年かかって性別適合手術をすべて済ませた。
中5年はうつ病が重篤な状態になり、つごうまる1年と少しの入院を含む何もできなかった期間。もう大変。
現在は病状も落ち着き、ライター兼作家として地味に活動中。
主な仕事:
ホンシェルジュ「衛澤創の本棚」
DIVERSITY STUDIES「SOU!ルーム~衛澤さんのちょっとええやん~」
オフィス・エス(個人サイト)