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知的障害者は「知らないから怖い」がいっぱいある

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知的障害 怖い

怖い思いをすることは誰にでもあります。怖さの種類はいろいろありますが、「知らないから怖い」と思うことは結構あるのではないでしょうか? 重い知的障害を持った方も同じです。障害が重いから理解できないだろうという理由で、知らないままにされていることが多い方々にとって、私たちには当たり前のことでも「怖い」と感じてしまうこともあります。

知的障害者が強いられる、突然の集団生活

最重度知的障害を持ち、家族だけの生活を40年以上も送ってきた方が入所されました。介護者が高齢となり、自宅での生活が困難になったためです。家族は両親のみ。兄弟はいません。

幼少期は就学免除となり、入所に至るまで家族以外の人間関係はなく、集団生活は今回が初めてです。

自宅生活は、一日の大半を室内で過ごし、散歩に出かける時も世間体を気にされ、人通りの少ない夜に出かけていたそうです。色白で、ふっくらとした体形の割には下半身が細く、発語は幼児語がいくつか確認できる程度。髪の毛は不揃いに伸び、切れる部分だけ家で切っていたとのこと。

「なにもできない子なので、親が犠牲となって精一杯のことをしてきました」と話される親御さんからは、ぎりぎりまで自宅介護されてきた大変さと今後の不安、受け入れ先が見つかった安心感など複雑な思いが伝わってきました。

障害者施設はまさに「知らないから怖い」だらけの場所

入所されてまず初めの問題は、トイレに入れないことでした。自宅以外のトイレを使った経験がないため、何をする場所なのかも分からない様子でした。自宅は和式トイレだったので、洋式トイレには座ることもできません。

どこがトイレか分からず、切羽詰まって失敗してしまうことが続いたため、自宅と同じ和式トイレのみを使用し、実際に付き添った職員が便器をまたいで座って見せるなどを繰り返しました。トイレと認識できてからは怖がることもなく、誘導にも素直に応じ、排尿のサインを出してくれるようになりました。

入浴も浴槽に入れず、大声をあげて大抵抗。家庭用よりも数倍大きいのでそのせいかと思いましたが、自宅でも浴槽には入らず、シャワーだけで済ませていたそうです。何度かトライしてみましたが、ご本人にとっては怖さが先立ってしまい、とても入浴を楽しむ状態ではなかったため、よほど寒い時以外はシャワーのみとしました。元々水遊びはお好きなようで、シャワーから出るお湯を手ではじいて笑い声をあげるなど、リラックスできる場となりました。


居室は個室をご用意しましたが落ち着けず、他人のお部屋に無断でお邪魔しトラブルに。夜も横になることができず歩き回る日が続きました。寝具は施設備品のベッドでしたが、ご自宅では畳に布団だったと伺いベッドを撤去。その他目印になるようなものを置く、眠るまで職員が付き添うなど試行錯誤を繰り返し、「いてもいい場所」「寝てもいい場所」であることを理解していただきました。

ご本人にとって「知らないから怖い」ことをひとつひとつ拾い上げ、伝える方法を模索し、「知っている場所」「知っている人」を増やすことで施設での生活は楽になったと思います。しかし、入所当初どれほど不安で怖い思いをしていたかは、一気に増えた白髪が物語っています。

知的障害者「知らないから怖い」 最後に

この方にとって、自宅以外は全て「知らない場所」でした。施設職員も対応に苦労しましたが、一番大変な思いをされたのはご本人です。また、親御さんも「知らない場所」へ子供を預ける不安や後ろめたさもあったでしょう。この方が子供の頃は今よりも偏見が強く、相談機関も施設も充実していませんでした。ご近所への世間体もあったでしょう。選択肢は少なく、まる抱えして、家族だけでひっそりと生活していくことを選ばれたとしても、やむを得ない時代だったと思います。

知的障害の方々は、能力的な問題で理解や判断、選択が苦手なことは間違いありません。しかし、「わからない」と「知らない」とでは大きな違いがあります。わからなくて困っているのなら手助けし、知らないから困っているのであれば知らせる、伝える努力を怠らないことです。そのためにはまず、困っている方自身を知ることです。そして、注目すべきは障害の重さやできないことではなく、その方が持っている「可能性」。宝探しをするような、とっても楽しい作業です。今すぐにでも、始めて見てはいかがですか?

(執筆 Radius)

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Radius by
社会福祉士
障害者福祉の現場を離れて10年になる。
知的障害者が「精神薄弱者」と呼ばれていた時代から勤務。措置制度から契約制度への移行も経験する。相談業務、日常生活支援、余暇活動支援、就労支援、一人暮らし支援等多くのサービス提供に携わってきた。
長い現場での経験から学んだことは「感じる」大切さだ。「考える」だけでは見えないことも、「感じる」アンテナが働けば展望が開けることもある。
私が実践してきたことが、今現場で試行錯誤している職員の皆さんの参考になればと思う。