読者の皆さまは、記憶喪失を経験したことはありますか。
これから、記載する内容は私の記憶喪失の体験談です。ただし、記憶喪失と言っても、事故の衝撃で記憶を失ったパターンではありません。また、一カ月ほどの、記憶喪失の体験談です。
私の場合は、精神的なストレスで記憶喪失に陥り、健忘の中の一つと判断されました。ただし、今現在は、記憶は戻っています。また、記憶喪失は人それぞれで、私自身、記憶喪失中の記憶があることが不思議です。なお、記憶喪失中の記憶を覚えていないことが記憶喪失の定義なら、少し話は変わってしまいます。
ちょっとした不思議な体験談として、楽しく読んでいただきたいと思っています。
私はいつ、記憶が消えたかは明確に覚えていません。ただ、当時は毎日、二時間ほどのみ、記憶を失うことに悩んでいました。ゆえに、記憶喪失に陥る前兆は、あったのかもしれません。
私の場合、健忘に繋がった原因に関する記憶や、情報のみ消えました。そのため、健忘に繋がっていると思われる過去は、思い出せませんでした。かつ、思い出そうとすれば、頭痛や吐き気のような感覚に襲われ、脳から思い出すなと指令をうけていました。
どれだけ、記憶を思い出そうとしても、頭の中がもやもやするだけでした。また、精神面で変わったことは、記憶が消えているおかげで、心が軽くなりました。なお、私自身、何か大切なことが思い出せない、けども、毎日が新鮮と言ったところです。また、記憶を無くしていたころの方が、性格が穏やかになって、笑顔が増えていたと感じます。
私がよく行くスーパーや、よく歩いていた道路も、初めて見る景色に変わりました。ただ、よく行っていたスーパーという感覚はあるが、こんなスーパーに行ったことがあったかな? という不思議な感覚です。また、自分の家の感覚が、変わりました。というのは、目を覚まして天井を見ても、知らないホテルに宿泊している感覚でした。
私の健忘の場合は、過去が思い出せず寂しくなりました。というのは、なぜここにいるのか? ということが、分からなくなりました。いわば、他の世界へワープをして、宇宙人と生活を始めた感覚です。ただ、人の名前は覚えていたり、未来のスケジュールは覚えています。また、物の名前や良い思い出は、覚えていました。
好きな食べ物は思い出せず、食欲はなくなりました。しかし、食べなくてはならないという本能はあり、ご飯は食べていました。また、入浴時間や睡眠時間は、体が覚えていたため、他人に迷惑はかけませんでした。ただし、どういう風に、友達と接していたかを忘れたり、犬猿の仲でも仲良く過ごせたり、人間関係は、穏やかになっていました。
仕事上の人間関係は、不安でいっぱいでした。というのは、仕事の会話で、初めまして感をださないために、どうやって接するか? どういう、テンションで話していたか? など、上下関係は取りにくかったです。ただ、仕事は、何とかできました。
私の日常生活は、私なのに、私がどういう人物なのかも思い出せず、よく泣いていました。また、記憶を失ったことを、信じられない人々の問いかけに苦しみました。なお、私が思うには、記憶喪失に陥った方に、無理に記憶を思い出させることは、よくないと感じます。
記憶を思い出した経緯は、自分自身でも、はっきりとは分かりません。ただ、分かっていることは、地元から離れて、記憶を思い出したということです。というのは、地元から離れて出会った知人に、過去の話をしていました。なお、私自身は、えっ? 記憶が戻っている? くらいで、また、記憶がなくなると思っていました。
記憶を思い出したと確信した時は、地元に戻って数時間が経過した頃です。というのは、よく分からない心の苦しみに襲われ、地元から離れたいと思えました。また、記憶を思い出したものの、過去を受け止められず、何日かパニックになりました。なお、発狂するほどの記憶が、いっせいによみがえり、もう一度、記憶喪失に陥りたいと願いました。
健忘は健忘で、何も思い出せない寂しさや悲しさに襲われ、記憶が戻ったら戻ったで、苦しみに襲われ、つらかったです。ただ、つらさを天秤にかけるなら、記憶を失っていた方が幸せでした。
私が記憶を失っていた期間は、一カ月ほどです。また、精神障がいとも、言われるかもしれません。ただ、はっきり言えることは、つらい数年間分の記憶が抜けた状態とも違い、毎日、数時間のみ記憶が消えた状態でもありません。というのは、どちらも経験したことがあるため、記憶喪失の多少の違いは分かります。
(執筆 城岸美稀)